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大腿骨近位端骨折術後のリハビリテーション単位数について
安保 雅博
1
1東京慈恵会医科大学
pp.212
発行日 2015年3月18日
Published Date 2015/3/18
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先日,リハビリテーション(以下,リハ)医学に掲載された大腿骨近位端骨折術後のリハ単位数に関する論文1)であるが,やや誤解を招くような記載があるように思われる.この研究は高齢大腿骨近位部骨折術後におけるリハ単位数とADL,医療費との関連性を検討した無作為化比較試験である.1日6単位群と1日2単位群間で比較したところFIM, Barthel Index,EQ-5D,歩行に関し統計学的有意差がなかったとし「急性期一般病棟においてのリハは医療費効率利用の観点からみて,1日2〜4単位で十分と言わざるを得ない」と結論づけている.この解釈は正しいのであろうか.
本研究に関してはサンプルサイズ設定と研究デザインにやや問題があるように思う.本研究における最終的なADL評価時点での症例数は6単位群:29人,2単位群:29人と小規模なものである.本研究においてサンプルサイズをどのように決定したかは記載されていないが,P値を用いた統計学的有意差判定にはサンプルサイズが大きく関わってくる.症例数が少なければ少ないほどP値は大きくなり,統計学的有意差は検出できなくなるからである.このため「差がない,同等である」ことを示したい場合,非劣性試験2)の研究デザインがよく用いられる.しかし非劣性試験のデザインをとっていない本研究における「統計学的有意差がない」の解釈は「差があるとは言えないが,差がないとも言いきれない(サンプルサイズ不足の可能性がある)」となる.
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