第48回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/千葉 《パネルディスカッション》がんのリハビリテーションの実践に向けて―座長/辻 哲也
大学病院における取り組み―造血幹細胞移植を中心に―
高橋 紀代
1
,
佐浦 隆一
1
,
井上 順一朗
2
,
三浦 靖史
2
,
黒坂 昌弘
2
1大阪医科大学総合医学講座リハビリテーション医学教室
2神戸大学附属病院リハビリテーション部
pp.302-307
発行日 2012年6月18日
Published Date 2012/6/18
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
造血幹細胞移植は白血病などの腫瘍性疾患に対する根治療法,重症再生不良性貧血などのリンパ造血系の遺伝性疾患に対する骨髄機能正常化を目的とした治療法として良好な成績をあげている.しかし,前処置としての超大量抗癌剤投与と全身放射線照射,無菌室(クリーンルーム)での長期間にわたる隔離や安静,合併症としての全身倦怠感,悪心・嘔吐,下痢,食欲不振,不眠,移植片対宿主病(Graft versus host disease:GVHD)などにより身体活動が制限され運動に対するモチベーションも低下するため,全身的な筋力低下1),柔軟性低下2),心肺機能低下3)などの重度の廃用症候群に陥る.また,隔離に身体的安静が加わると抑うつや知的機能の抑制などの精神的廃用も生じやすい4).そして,これらの身体的および精神的廃用は退院後の日常生活再開や余暇活動,職業復帰にも悪影響を及ぼし,患者のQuality of Life(QOL)を低下させる5,6).
移植患者の廃用症候群は移植前処置開始後より発症すると考えられるため,可及的早期からリハビリテーション(以下,リハ)を開始する必要がある7).特に造血幹細胞移植患者では,活動範囲が大幅に制限されるクリーンルームでの治療が必須であるため,その期間の身体活動量を維持することが廃用症候群の予防に必要であり,そのための様々な取り組みがなされている.
本稿では,神戸大学病院,京都大学病院,大阪医科大学病院における造血幹細胞移植患者に対するリハの現状を述べ,大阪医科大学病院における造血幹細胞移植患者のリハ導入期の問題点と今後の課題を検討したので若干の文献的考察を加えて報告する.
Copyright © 2012, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.