第Ⅲ章 各論:がん治療とエビデンス がん治療の最新エビデンス
造血幹細胞移植
森 慎一郎
1
1聖路加国際病院血液内科
pp.161-165
発行日 2019年2月25日
Published Date 2019/2/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango24_161
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造血幹細胞移植とは,致死量を超える抗がん薬投与や,全身放射線照射などの前治療を施した後,結果的に生じる致命的な骨髄不全を造血幹細胞によって再構築する治療である.自己の造血幹細胞を使用する自家移植と,別の個体由来の幹細胞を使用する同種移植の2種類がある.
Point
同種造血幹細胞移植が始められた当初は,治療が成功する要因として,次の3条件が挙げられていた1).
①患者に高度の免疫抑制効果をもつ前治療を行う
②ヒト白血球抗原が一致した血縁者をドナーに用いる
③幹細胞の生着まで患者を無菌環境下に置き,強力な支持療法を実施する
しかし,その後の治療法の進歩により,この3条件は次々と克服され,現在では移植前治療の強度を減弱したミニ移植,非血縁ドナーやHLA(Human leukocyte antigen:ヒト白血球抗原)不一致ドナーからの移植,無菌室を使用しない移植などが日常的に実施されている.この変化の背景には,臨床研究の積み重ねによるエビデンスの集積と,これを基に得られたコンセンサスである,ガイドラインの存在が大きな役目を果たしているといえよう(表1)2-9).
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