第48回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/千葉 《教育講演》
「引き算」の医療安全と病院の「5S」
矢野 真
1,2
1武蔵野赤十字病院医療安全推進室
2武蔵野赤十字病院呼吸器外科
pp.191-193
発行日 2012年4月18日
Published Date 2012/4/18
- 販売していません
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
1999年に発生した2つの医療事故(手術患者の取り違え,消毒薬の誤注射)があまりに衝撃的で,全国の病院が態度を変えることになった.患者確認のために,フルネームでの確認,リストバンドの着用などが行われるようになり,また,シリンジの色を変えて,注射薬・経管栄養剤・消毒薬等を区別するようになった.
それから,10年以上が経過した.インシデントレポートが集められ,事故分析がなされ,様々な場面でダブルチェック,指差し呼称が行われ,何種類ものチェックリスト,アセスメントシートが作られた.
医療安全の研修会が義務づけられ,病院職員の多くがジェームス・リーズンのスイスチーズモデルを知ることとなった.そして,医療界は原子力発電所や航空業界の安全管理と比較して,スイスチーズ(エラーに対する防御壁)の枚数が少ないと言われ続けてきた.病院の安全対策は航空業界と比較して25年遅れているとも言われた.
根本原因分析法を用いて,考えられる限りの背後要因を洗い出して,再発予防策を検討し,業務に組み入れていった.
もちろん,これらの取り組みが成果を上げ,事故防止に役立ってきたことに異論はない.スイスチーズが増え,ヒューマンエラーが発生したとしても,プロセスの途中でエラーを発見し,実施前に予防することも可能となった.
しかし,医療者として,我々を取り巻く環境や業務内容が安全になったという実感があるだろうか.むしろ,多忙で煩雑で余裕のない日常となっているのではないだろうか.このような状態はエラーを誘発する可能性がある.
Copyright © 2012, The Japanese Association of Rehabilitation Medicine. All rights reserved.