特集 改めて病院の安全管理を問う
病院医療における安全管理への提言
山内 桂子
1
1国立小倉病院附属看護助産学校
pp.124-127
発行日 2001年2月1日
Published Date 2001/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541903195
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医療事故による損失
頻発する医療事故の報道に国民は不安を感じている.米国医療の質委員会・医学研究所(以下,IOM)が1999年に出した調査報告書1)によれば,米国の病院で医療事故によって死亡した患者は1997年1年間に44,000〜98,000人と推定されるという.これは交通事故,乳がん,エイズによる死亡者よりも多い.日本ではこれまで医療事故の事故数や事故による死傷者数についての全国的レベルの調査は行われていないが,米国との人口比から考えて,日本でも年間に数万人が死亡していると見ることができそうだ.
IOMのデータでは,医療事故によるコスト(経済的損失)も毎年376〜500億ドル(5兆円)にのぼるとされている.そのうち,防ぎ得る「有害事象」によって生じたコストだけをみても,その半分以上になるという.そこで,IOMは,安全の目標を設定し,研究計画を立て,安全システムの雛型を作る「患者安全センター」を新たに作るよう提言している.2000年2月,クリントン大統領はこの報告を受けて,「質向上と患者安全」のための新センターを設立し,その運営費として初年度の2001年度に2,000万ドルを計上すると発表した.
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