患者の論理・医者の論理(第6回)
引き算で得る安心 鑑別と除外診断のプロセス
尾藤 誠司
1
1国立病院東京医療センター総合診療科
pp.806-809
発行日 2003年9月1日
Published Date 2003/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100702
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【事例】
Tさんは39歳の会社員男性.ここ2週間ほどしばしば体動時に胸部正中からみぞおちのあたりに痛みを感じることがあった.痛みのため生活に支障をきたしているわけではないが,なんとなく気分が優れない.3年前に父親が胃がんで入院した経験があるため,自分も胃がんになっているのではないかと不安になり,市立S病院の内科を受診した.初診担当のA医師は一通りの診察を終えた後,Tさんに「病状の経過や診察から考えると,胃がんの可能性は非常に低いと思います.むしろ狭心症などの可能性を考えないといけないので,本日は心電図とレントゲン,あと血液の検査を受けてください」と説明した.A医師にいわれるままTさんは検査を受け,その後また診察室に戻った.A医師は「心臓は大丈夫そうですね.原因はよくわかりませんが,本日はとりあえず痛み止めと胃薬を処方しておきますね」と説明した.Tさんは不安になり,「私は胃がんが心配なのですが…」と話すと,A医師は「そうですか…がんはないと思いますが,逆流性食道炎の可能性もあるので,一応胃カメラ検査の予約もしておきますね」といって診療を終えた.
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