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はじめに
脳卒中による片麻痺上肢の回復は,難渋する場合がほとんどである.二木1)による報告では,上肢の麻痺のステージが発症3カ月時に92.5%がプラトーになるとし,発症6カ月以降にプラトーになるのは,わずか5.3%であるとしている.Nakayamaら2)の報告を見ても,軽度麻痺で発症後3週で80%,6週で95%がプラトーになり,重度麻痺で発症後6週で80%,11週で95%がプラトーに達するとしている.発症7日目での評価が,Brunnstrom stageⅠ,Ⅱであれば廃用手に,Brunnstrom stageⅤ,Ⅵであれば実用手になることがほとんどである3).
このような状況下の中,上肢のさらなる改善を求めて,いろいろな報告がなされている.経頭蓋磁気刺激(rTMS),経頭蓋直流電気刺激(tDCS),機能的電気刺激療法,ロボット補助訓練装置を使用した訓練,Constraint-induced movement therapy(CI療法)などである.
その中でも上肢麻痺に関する治療的rTMSの報告として,脳卒中後の片麻痺患者の健側大脳の一次運動野に1Hzの低頻度TMSを試みたところ(シャム刺激と比較して)麻痺側上肢機能の改善が確認されている4~6).また,活動時間の90%で健側上肢を三角巾などで拘束して,麻痺側上肢に連日6時の個別作業療法を通常は2~3週間の入院治療として行われるCI療法も効果があり7,8),EXCITE trialで有効性が証明された9).しかしながら,Pageら10)の報告によれば,健側上肢拘束時間の長さ,一日あたりの訓練時間の長さ,入院治療期間の長さから脳卒中患者の2/3はCI療法に対して拒否的であること,多くの作業療法士も同様の理由から,CI療法の導入は困難と考えていること,実際にOriginal CI療法を十分に供給できる施設は,決して多くはないと推測されることを指摘している.
基本的には,TMSも集中的作業療法のいずれも,病側大脳の代償能力を引き出すことと考えられる.では,これら両者を併用すれば,相加相乗効果が期待できるのではないかと考えた.よって,命題「いかに短期間で,患者の負担を少なく,上肢機能の向上が果たせるか?」をSafetyとFeasibilityを加味し,検証することにした.
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