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小児科医の不足が深刻な社会問題として各種マスコミに取り上げられている昨今,私の胸中は複雑な思いで一杯である.切断者のリハビリテーションを担当する医師もまた不足しているのではないかという思いである.リハビリテーション関連医学会における切断と義肢に関する医師による発表演題数が少ないことなどは,私の思いを裏付ける客観的な証ではないだろうか.また,現に切断者のリハビリテーションに携わっている各職種の方からも同様な思いを聞くこともしばしばである.日本における切断者のリハビリテーションと義肢学の草分けであり,それらを世界的レベルまで発展させてきたリーダー(医師)たちが次々と引退していくなかで,残念ながらこれらの分野における医師の空洞化が現在生じてしまったと言わざるを得ない.ではなぜこのような空洞化が生じてしまったのか.私なりにその理由を考えてみた.第一に障害者のなかに占める切断者の割合が少ないこと,第二に従来から切断者のリハビリテーションを専門的に行ってきた施設が限られていたこと,が理由として考えられるのではないか.
切断者の絶対的人数は脳血管障害や脊髄損傷患者に比べて少なく,彼らは主として切断者のリハビリテーションを専門的に行う施設に集中する(紹介,あるいは最近では自らインターネットなどで探して).そしてそこで評価,義肢処方,適合,訓練を受けるわけである.当然,そのような専門施設では年中を通して多数の切断者のリハビリテーションを担当することとなり,チームスタッフは常に最新の情報を入手し,切断者にフィードバックしようとする.さらに実際の臨床のフィールドでの経験も豊富となり,ますます良質なリハビリテーションサービスを切断者に提供できるといった良い循環をもたらす.一方,一般病院ではどうか.医師を含めたチームスタッフが切断者のリハビリテーションに携わる機会があまりに乏しいため,切断者のリハビリテーションに対する関心が薄れていくといった現象が生じているのではないか.
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