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近年,失語症患者に対するノーマライゼーションへの取り組みとして,会話パートナーの育成が行われるようになってきた.失語症患者の会話パートナー(conversation partners for people with aphasia)は,失語症を理解し,失語症患者の話し相手となりコミュニケーションをサポートする者(Kagan 1998)であり,会話技術を身につけた家族や地域のボランティアがなることが多い.会話パートナー育成の試みは1990年代からカナダで本格的に始まった.わが国では,2000年に東京で初めて養成講座が行われて以来,自治体や県士会,有志の言語聴覚士らによって実施されるようになり,現在ではNPO法人として成果を上げている団体も出ている.
本大学には構内のクリニックに言語聴覚センターが設置されており,そこでは小児から高齢者に至る幅広い臨床活動,地域医療福祉への支援活動,患者会の活動支援を行っている.同センターでは言語聴覚学科教員13人と専任の言語聴覚士5人が協力してこれらの活動を行っている.失語症の言語治療については,地域の患者を対象として外来による言語聴覚療法を提供している.本地域は自家用車が主な交通手段で近隣社会が重視される特徴があり,このような地域で失語症がある人が閉じこもりにならず,地域で自分らしい生活を生き生きと営めるようになるには,コミュニケーションのノーマライゼーションの推進が必要である.そこで,われわれは開学以来,地域住民と医療福祉の関連職種を対象としてさまざまな講習会と講演会を開催してきた.そのような活動の一環として,2006年より失語症会話パートナー養成講座を開始することとなった.
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