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感情のコントロールが苦手,対人コミュニケーションがうまくいかない,自信がない,忘れ物が多い,集中力がない,落ち着きはない,運動が苦手など,困っている子どもたちがいます。この特徴を本書では,① 認知機能の弱さ,② 感情統制の弱さ,③ 融通の利かなさ,④ 不適切な自己評価,⑤ 対人スキルの乏しさ加えて⑥ 身体的不器用さ,の6つに分類しています。これらの困っている子どもの特徴に対応させた,三方面(社会面,学習面,身体面)からの支援のために開発されたのが,コグトレです。コグトレとは,「認知○○トレーニング(Cognitive○○Training)の略称であり,○○には,「Social」,「Enhancement」,「Occupational」が入ります。コグトレには,社会面には,認知ソーシャルトレーニング(COGST)。学習面には,認知機能強化トレーニング(COGET)。身体面には,認知作業トレーニング(COGOT)があります。今回の社会面のコグトレは,認知ソーシャルトレーニング(COGST)であり,1と2に分冊されてまとめられています。1には,「段階的感情トレーニング」と「危険予知トレーニング」が,2には,「対人マナートレーニング」と「段階的問題解決トレーニング」が学べるように構成されており,そのままコピーして使用できるワークシートが掲載されています。対人マナーは,人との円滑なコミュニケーションをとるうえで一番基本になるものであり,ノンバーバルコミュニケーションが非常に重要と示されています。「対人マナートレーニング」では,① あいさつ,② 誘う,③ 尋ねる,④ 頼む,⑤ 謝る,⑥ 断る,⑦ お礼のマナーをさまざまな状況の,失敗例と成功例のワークシートに沿って,対人マナーの違いによって相手がどのように感じるかを想像させて,適切な対人マナーの理解を促していくことができます。
「段階式問題解決トレーニング」では,日常生活で起こるさまざまな問題を解決することを学び,トレーニングすることができます。対人関係が絡んだ問題の解決に重要な力は「融通を利かせる」ことと示されています。「何も考えずに思い付きでやってしまう」「思い込みが強い,気づきが少ない」「一つのことに没頭すると周りが見えなくなる」などの行動の背景には,より多くの選択肢を持てないこと,思考が固いことが考えられ,選択肢が少ないことで融通の利かない不適切な行動につながったりすると説明されています。問題が生じた際の解決のアプローチとして,「問題解決型アプローチ」が採用されており,子ども自身が自分で問題解決できる力をつけることの重要性が述べられています。このトレーニングでは,① 何があったか考えよう,② 目標を決めよう,③ あなたならどうする? の3つのトレーニングから構成されています。はじめに解決策を考えることに慣れ,次に適切な目標を考え,最後に両者を一緒に合わせた練習を,段階づけて行えるように工夫されています。本書の特徴は,子ども自身で問題解決する力をつけられるように工夫されている部分になります。本書で学び,困っている子どもの支援に活用されることで,子どもたちが「生きやすくなる」ことを期待します。
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