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はじめに
MSWは病院等の保健医療の場において,社会福祉の立場から患者の抱える経済的,心理的・社会的問題の解決,調整を援助し,社会復帰の促進を図る役割を担っている。「医療ソーシャルワーカー業務指針」では,「地域活動」を業務の一つとし,次のように示している。
「患者のニーズに合致したサービスが地域において提供されるよう,関係機関,関係職種等と連携し,地域の保健医療福祉システムづくりに次のような参画を行う。
① 他の保健医療機関,保健所,市町村等と連携して地域の患者会,家族会等を育成,支援すること。
② 他の保健医療機関,福祉関係機関等と連携し,保健・医療・福祉に係る地域のボランティアを育成,支援すること。
③ 地域ケア会議等を通じて保健医療の場から患者の在宅ケアを支援し,地域ケアシステムづくりへ参画するなど,地域におけるネットワークづくりに貢献すること。
④ 関係機関,関係職種等と連携し,高齢者,精神障害者等の在宅ケアや社会復帰について地域の理解を求め,普及を進めること。」1)
しかし,病院機能の分化や平均在院日数の短縮化等に伴い,業務の大半が病院内における「入退院支援」(個別支援やカンファレンス等)に割かれ,「地域活動」が十分にできない現状がある。一方,「地域包括ケアシステム」の構築が,「地域共生社会」を目指す過程であると言われて久しく,MSWもさまざまな立場で「地域の保健医療福祉システムづくり」に参画していることも報告されている。
では,MSW一人ひとりにとって,「地域」とは何処を指すのだろうか。業務指針においても明確に定義はされていない。
またMSWは他の医療職に比べていまだ少数の福祉職である。初任者から管理者まで実務経験等に応じた職位・職責が整理され,独立したソーシャルワーク部門としての体制が整っている病院は多くない。したがって,MSW一人ひとりが日々の業務を通して,また専門職として「地域」に出る意義を理解するには,ソーシャルワークのグローバル定義(表1)や価値・倫理,MSW倫理綱領を基盤に,また多くのMSWが取得している社会福祉士に求められている役割を元に考えることが必要である。
本稿は,病院において約30年間相談支援を実践してきたMSW,急性期病院における医療福祉相談室の管理業務を経験した者,また専門職団体である沖縄県MSW協会(以下,県MSW協会)の代表理事としての立場から,沖縄県から県MSW協会が受託した「沖縄県入退院支援連携デザイン事業」(以下,デザイン事業)の取り組みを通して,ミクロ・メゾ・マクロの視点で,MSWが「地域」に出る意義と,これからのMSWに求められていることについて考える。
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