特集 ソーシャルワーカーと地域活動
お茶の間から始まる地域ソーシャルワーク
鴻巣 麻里香
1
1KAKE COMI
pp.246-250
発行日 2019年9月15日
Published Date 2019/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003201092
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誰も「被援助者」にしない場所
非営利団体KAKE COMIの拠点である「まかないこども食堂たべまな」(図1)は,福島県の南端,白河市の市街地にある。JR新白河駅から徒歩5分,通りからやや奥まった位置にある小さな民家は,控えめな看板が精一杯自己主張しても見過ごされやすい。古民家と言えば聞こえはいいが,東日本大震災を無傷で乗り越えたことが奇跡のようなただの「古い家」だ。「ぼろい家」と言い換えることもできる。玄関の引き戸をあけた右手のお茶の間とその奥の台所,そして2階にある和室が「たべまな」だ。毎週月曜日の午後3時から夜8時までの間,このお茶の間は約20人の子どもたちと地域の大人たちとで賑わう。
「こども食堂」はその名がそのまま意味するとおり,子どものための食堂だ。「子どもの貧困」という社会問題がクローズアップされるに比例してその数を増やし,全国で3,000箇所を超える(2019年8月現在)。それぞれ特色があり,頻度も規模も異なるが,子どもたちに無償あるいは安価で食事(多くの場合夕食)を提供するスタイルは共通している。「たべまな」は毎週月曜日の午後から夜に開催し,18歳以下は無料,大人は任意の金額を容器に入れる「投げ銭カンパ」で利用できる。利用する子どもは毎回約20名。開所以来4年間で実に100名を超える子どもたちが訪れた。
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