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はじめに
大学でソーシャルワークを学び,児童養護施設と呼ばれる貧困や虐待など家庭で生活できないと行政(児童相談所)に判断された子どもたちが集団生活をしている施設で働く中で感じていたのは,専門的支援,制度による支援による違和感でした。子どもたちは施設で生活するうえでは,専門家に囲まれ,食事や生活必需品に困ることはありません。しかし他人との集団生活,親や家族ではない専門職による養育は,施設という空間が学校から帰ってきた子どもたちにとってホッとする場になりにくい空気を生み出していました。やがて子どもたちは施設から家庭に戻ったり,子ども時代を終えて成人となったことで施設を退所します。そのようにして施設から地域に戻って生活する子どもや若者を支える仕組みができていないことの課題を知ったのは現場で働いてからでした。日本の中にはそのような子どもが約4万5,000人もいるにもかかわらず,そのような子どもや若者に対する地域の受け皿はまだまだ整備されていません。
その後,教育現場(小中学校)で働くスクールソーシャルワーカーとなりました。そこで気づかされたのは,自分が働いてきた児童養護施設などにいる子どもたちは,虐待を受けている子どものほんの一握りであったという事実でした。虐待を受けている子どものうち緊急一時保護などで家庭から子どもを保護するケースは虐待ケースの約1割。そのように保護された子どものうち約2割が一時保護の後に児童養護施設や里親の元で生活を送ることになりますが,残りの約8割の子どもたちは1カ月前後でまた虐待を受けている家庭に戻ることになります。また虐待だけでなく貧困課題によって子どもらしい生活が家庭でできていない子どもたちが抱える課題も学校に入ることで見えてきました。子どもの貧困課題,虐待児を支えるためには在宅支援が求められていました。
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