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はじめに
整形外科医は,検査や手術に伴う職業被曝が多い4,10).X線透視を使用する機会が多く,特に脊椎外科領域では,手術の低侵襲化に伴い手術中のX線透視の必要が高まったことや脊椎内視鏡下手術時のX線透視の使用などにより,いっそう被曝の機会が増加している22).さらに検査や治療で神経根ブロックや脊髄造影などを行うため,その都度放射線被曝の危険に曝される.被曝に関心がない医師の場合には,直接被曝を受けていることが想定される.そして,放射線防護具や測定器の使用割合は決して高いとはいえない現状がある1).
患者にとって正確な診断や低侵襲手術を受けるために必要な医療被曝は,検査や治療を受ける際の一時的なものであり,それを受ける患者にとっての恩恵が高く,益が害を上回る.一方,整形外科医は検査や手術が多く,直接X線に曝される機会が多いことから,慢性的に長期にわたって低線量の被曝を受け続ける可能性がある.放射線障害にはしきい値があり,その値を超えなければ危険性は低いとされているが,単一の限られた医療機関だけでなく,複数の医療機関での診療を行っている医師も少なくないことから,検査や手術を含めたすべての被曝量をモニタリングできているとは限らず,その正確な被曝量を把握し管理するのは難しいのが現状である.また,放射線に対する関心や知識の有無,および医師の経験年数によって,放射線防護への意識も一様ではないという問題点がある.整形外科医の放射線障害の報告は多くはないが,報告されていない有害事象も水面下に存在することが想定される.特に,直接X線に曝される可能性のある手の皮膚炎や皮膚がんの報告があり,悪性病変の出現は,その後の医師のキャリアに大きく影響する14).本稿では,職業被曝による手の皮膚障害に対する整形外科医の意識が向上することを目的に,筆者が経験した利き手の皮膚障害について紹介し,職業被曝による皮膚の放射線障害に関する問題点や課題について考察する.
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