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はじめに
本稿は,日本IVR学会誌に2012年に掲載された「自慢の技:腹部血管造影きほんの“き”:術者の被曝防護」11),2015年に掲載された「放射線防護 眠くならない被曝の話 実践的な従事者被曝防護」10),Interventional Radiology誌に2022年に掲載された「Practical radiation protection for interventional radiologist」9)に大幅な加筆訂正を加えたものである.
東日本大震災により福島第一原子力発電所事故が発生し,多くの国民が放射線被曝について高い関心をもつようになった.しかしながら,マスコミの放射線被曝に対する報道は煽情的に不安をあおるものが多い.これらの報道に曝された若い医師たちの中には,透視下での医療手技の施行について,漠然とした不安をもつものも少なくない.
一方で,一部の熟練者の中には「私は自己責任で被曝している」と称して,患者に高度な手技を提供することに心血を注ぐ余り,術者自身の被曝防護への配慮が疎かになっている事例も少なからず存在する.指導的立場の医師においては,術者被曝の防護は,その指導下の若い医師たちのために厳格になされなければならない.熟練者が「自己責任での被曝である」と称して,大量被曝を前提とした手技を若い部下に教育することがあってはならない.
放射線防護に関して,教科書的な内容については多くの報告が存在する反面,実務に即した実践的な手法についてはまとまった報告が少ない.さまざまな被曝低減手法について「有用である」や「低減することができる」という記載に終始して,その優先順位や被曝低減に寄与する“程度の差”が明確ではない.本稿では,学問的な正確性よりもわかりやすさを優先し,可能な限り実務に即したメディカルスタッフの被曝防護について述べる.
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