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はじめに
本邦における65歳以上の人口割合は2020年時で28.6%と,世界で最も高齢化の進んだ国である.さらに,今後も少子高齢化により2040年には65歳以上の人口割合は35.3%まで増加し,75歳以上の人口割合も20.2%になると予測されている.一方で,健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間と定義される健康寿命においては,2019年時の調査で女性が75.38歳,男性が72.68歳とそれぞれ平均寿命との差が12.06年と8.73年となっている.このため健康寿命の延伸が求められており,高齢者における運動器の機能維持は重要な課題の1つである.2011年の日本脊椎脊髄病学会の調査によると,脊椎手術は70歳代で最も多く施行されており,2021年の日本整形外科学会症例レジストリの年次報告をみても同様である.脊椎手術はまさに健康寿命延伸が求められる70歳代で最も多く実施されており,その果たす役割は大きいと考えられる.ただし,高齢者においては予備力の低下に加え,複数の併存疾患を有することも少なくない.手術侵襲や周術期合併症も危惧されるため,手術の低侵襲化が望ましいと考えられる.
近年の最小侵襲脊椎手術の発展は目覚ましく,内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術(microendoscopic discectomy:MED)4)や,全内視鏡下脊椎手術(full endoscopic spine surgery:FESS)3,18)などの除圧術が発展し,一方で経皮的椎弓根スクリュー(percutaneous pedicle screw:PPS)の導入をきっかけに最小侵襲脊椎安定術(minimally invasive spine stabilization:MISt)が提唱され12),退行変性疾患のほか,外傷,転移性脊椎腫瘍,難治性の感染性脊椎症,成人脊柱変形などにも応用されつつある.現在,X線透視は広く用いられており,脊髄造影や神経根ブロック,また脊椎手術において主たる術中画像支援としての役割を担っている.多くの低侵襲脊椎手術においてもX線透視は必要不可欠なツールであるが,一方で医療従事者の放射線被曝が懸念されている5).本稿では,低侵襲脊椎手術の代表的な手術の1つである最小侵襲腰椎後方椎体間固定術(minimally invasive transforaminal lumbar interbody fusion:MIS-TLIF)における医療従事者の被曝の実際と,われわれが行っている放射線被曝の具体的な低減方法について述べる.
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