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LIF手術の周術期合併症と術後管理についての概要
LIF(lateral interbody fusion)の導入による前方脊椎固定手術の低侵襲化は,それまで後方手術優位であった脊椎外科領域において前方手術要素を一般化させる大きな転換と潮流をもたらした.LIFは側腹部からの小皮切により後腹膜(後腎傍腔)に到達し,低侵襲下に術野の露出・観察を可能としながら大腰筋の前側方の解剖学的間隙ないし側方から椎間板にアプローチし,横方向に大型の椎体間ケージを挿入することで脊柱の安定化を図る術式である14,21).前方の椎間開大により効率的な後方の間接的除圧20)や椎間孔開大が得られる7)ことから,2010年代初頭に本邦へ導入されて以降,急速に普及した.一方で,前方固定手術の低侵襲下での派生術式であることから,後方手術で経験される場合とは異なる周術期合併症も報告されている.前方操作に伴い注意する項目として,分節動脈損傷などによる出血,大腿神経障害による一過性の知覚低下や筋力低下などの神経症状,腸管・尿管損傷などが挙げられる.LIFには大腰筋前方の解剖学的間隙にアプローチするOLIF(oblique lateral interbody fusion)と大腰筋束を鈍的に分けるXLIF(extreme lateral interbody fusion)があり,後者において大腰筋内の神経叢への干渉による術後神経障害の発生率が高いとされる6).LIF手術の合併症発生率はMIS-TLIF(minimally invasive surgery-transforaminal lumbar interbody fusion)と同等かやや高めであるとは報告されているものの,間接除圧や固定性などの確実性やMIS-TLIFと遜色のない術後経過により,その有効性は一定の割合で報告されている26).
また,LIF手術が広い年齢層に対して行われるようになり,その合併症の発生率にもやや特徴がみられるようになってきている.Jinら 9)の報告によれば,65歳以上のLIF症例では通常の大腿知覚低下に加えて近位筋力の一過性低下や尿管損傷などの発生率がやや多かったと報告されており,加齢に伴う脊椎変性の影響の可能性が考えられるため術前の評価を十分に行う必要がある.腰椎後側弯症に対するLIF手術では進入側を凸側,凹側のいずれにするかも重要な検討項目であるが,一般に凸側からの側方進入は,凹側からの進入と比較して臨床的・X線的なアウトカムが同等であり,かつ合併症も少ないと報告されている.一方で,凹側からアプローチする利点としては,1回の切開で複数の椎間に到達しやすいこと,手術台のブレイクにより側弯の矯正効果を獲得し得ること,L4-5椎間板腔へのアクセスが容易なこと,後側弯による短縮側を効率的にリリースできること,そして多くの場合胸腔への進入の必要性を回避できること,などが挙げられるため,この意味でも術前の評価が重要である23).
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