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はじめに
拡散テンソル画像(diffusion tensor imaging:DTI)およびそこから得られるトラクトグラフィー(diffusion tensor tractography:DTT)は,神経線維という強い拡散の異方性を示す組織があることから,神経領域は特に有効な領域である.撮像の容易さから脳で広く使用されてきたが,撮像技術の向上により末梢神経でも利用されるようになっている.日常臨床において,末梢神経の評価は神経診察や電気生理学的検査が中心となっているが,主観的な要素が混じる評価方法である.どれほどの重症度の病変が存在するかを評価し,治療が行われた際の効果判定を行うのに,より客観的なバイオマーカーが求められている.DTIから得られるmean diffusivity(MD),radial diffusivity(RD),axial diffusivity(AD),fractional anisotropy(FA)といった定量値には,それが期待されている.
DTTは末梢神経を可視化する手法の1つである.末梢神経を単に可視化したい場合は,3Dスピンエコー系,steady-state系といった撮像法が選択されることが多い.これらの撮像法は高解像度で周囲解剖構造と神経との関係を描出可能である.DTTに期待されていることは,解剖学的な評価というよりも,障害神経を同定することである.たとえば,形態画像のみでは単に圧排されているだけなのか,圧排されて組織的な障害を伴っているかの鑑別は難しい.一方DTTは,神経方向の拡散が連続しているか否かに基づいてトラクトを引くため,機能を反映した可視化手法となっている.
DTIは,画質・定量性向上のため,撮像法・後処理方法にさまざまな工夫がなされてきた.逆に,これらの撮像・処理条件によって得られる数値は変化する.撮像部位,患者の体格や状態によっては,アーチファクトに悩まされることもある(図 1).得られる数値の再現性には,DTI,DTTを使用する際には十分留意する必要がある.
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