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本号では,「PLIF・TLIF—手術手技の原点とエキスパートの工夫」と題し,脊椎外科医にはなじみ深い手術であるPLIF・TLIFを取り上げました.PLIFはposterior lumbar interbody fusion(後方経路腰椎椎体間固定), TLIFはtransforaminal lumbar interbody fusion(経椎間孔的腰椎椎体間固定)が正式名ですが,略称のほうがむしろ一般的でしょう.PLIF・TLIFといった後方アプローチによる腰椎椎体間固定術は,腰椎すべり症をはじめ,さまざまな疾患に対して幅広く用いられています.現在,PLIF・TLIFは「基本手技」と位置づけられ,学会などで議論されることは少なくなりました.しかし,PLIF・TLIFを行い,狙い通りの結果を得るのは今でも決して簡単なことではありません.
本特集では,PLIF・TLIFを多面的に論じながら,エキスパートの先生方の手技の実際と工夫を紹介し,次世代に伝える場にしたいと考えました.はじめに,川口善治先生に,本術式の原点を振り返り,椎体間固定術の歴史と手術手技の変遷についておまとめいただきました.「特殊な術式」とされていた椎体間固定術が,標準的な手術へと進化を遂げる過程はとても興味深いです.次いで高見正成先生には,PLIF・TLIFの治療成績について,最新のご研究を紹介していただきました.固定 vs 非固定は,脊椎外科の領域で長く続く議論です.今後さらにエビデンスが蓄積されていくものと思います.続いて,経験豊富な先生方に具体的な手術手技について詳述していただきました.優れた技量をもつ脊椎外科医は,経験の中で確立した型(フォーム)をもち,自分なりのチェックポイントを確認しながら手術を進めています.ぜひ読者の皆様には,井野正剛先生,森平泰先生,奥山幸一郎先生,中尾祐介先生,長谷川和宏先生のPLIF・TLIFの「型」と「工夫」を熟読玩味していただければと思います.特集の最後は,海渡貴司先生に,自家骨をしのぐ性能をもちつつある骨移植材料について概説し,脊椎固定術の未来を展望していただきました.近い将来,骨癒合技術の革新によって治療体系が大きく変わるかもしれません.
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