特集にあたって

　社会の高齢化に伴い，脊椎脊髄外科の治療対象も大きく変化した．今回の特集のテーマである成人脊柱変形は，高齢化に伴い増えつつある疾患の1つである．近年，成人脊柱変形は，QOLの低下につながる重要な病態であることが認識され，積極的に手術治療が行われるようになった．成人脊柱変形の治療は，いまや脊椎脊髄外科の大きな柱といえよう．

　成人脊柱変形の治療は，決して容易ではない．高齢者に対する侵襲性が高い治療であるがゆえに，ときに命にかかわるような全身合併症も起こり得る．こうした合併症にどう対処すべきかを熟知し，迅速に対応しなければならない．また，骨質が不良な場合も多く，インストゥルメンテーションも難易度が高い．特に，多彩なインプラントをいかに使い分けるかという点で，経験が必要になる．成人脊柱変形の治療においては，ほかの疾患以上に知識と経験の“総合力”が要求される．