股関節と仙腸関節の関わり—Hip-SIJ-Spine syndromeの可能性

Relationship between Hip and Scroiliac Joint: A Possibility of Hip-SIJ-Spine Syndrome

はじめに

　20世紀初め頃，仙腸関節（sacroiliac joint：SIJ）は腰痛の大きな原因部位として注目されていた．しかし，1934年にMixter & Barrが腰椎椎間板変性と椎間板ヘルニアに言及して以来，SIJへの興味は薄れていった．近年，多くの患者さんが腰椎固定術を受けるようになり，再びSIJ由来の痛みが注目されるようになり，spineとSIJの関係も注目されている．また，複数の論文によりSIJと股関節の間に密接な関係があるのではないかと示唆されている．Offierski & MacNabが提唱したHip-Spine syndromeは互いに密接な力学的関係があることが多く報告されているが，Hip-Spineの間に存在するSIJは当然影響を受けていることが考えられる．

　股関節専門外来において，股関節の手術前後を問わず，いわゆる鼠径部痛を訴える患者さんに股関節由来とはいえない症例が多く存在することがわかり，調査した結果，上後腸骨棘（posterior superior iliac spine：PSIS）周囲にも痛みがある方が多いことがわかった．今回，その調査結果や股関節とSIJの関わりについて述べる．