Japanese
English
特集 心因性疾患(変換症/転換性障害;ヒステリー)の現在
転換性障害のリハビリテーション
Rehabilitation for Conversion Disorder
渡辺 俊之
1
Toshiyuki WATANABE
1
1渡辺医院/高崎西口精神療法研修室
1Watanabe Clinic/Takasaki Nishiguchi Psychotherapy Training Room
キーワード:
転換性障害
,
conversion disorder
,
リハビリテーション
,
rehabilitation
,
転移/逆転移
,
transference/counter transference
Keyword:
転換性障害
,
conversion disorder
,
リハビリテーション
,
rehabilitation
,
転移/逆転移
,
transference/counter transference
pp.229-234
発行日 2020年3月25日
Published Date 2020/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002201333
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はじめに
転換性障害は,かつてはヒステリーと呼ばれていた精神疾患である.ヒステリーは紀元前のヒポクラテスの時代から存在しており,子宮が水分不足になった女性の病気だとみなされていた.ヒステリーはギリシア語の子宮が語源である.現在でも転換性障害の患者は女性が男性の10倍であり,女性に親和性の高い疾患であることに間違いはない.19世紀になりフロイトによってヒステリー患者の精神分析が行われ,無意識に抑圧された願望や感情が身体機能障害に転換して生じるという抑圧と転換が原因だという理論が構築された.これは現在でも有用な理論となっている.
筆者が研修医時代だった30年前,精神分析的治療が行われていた外来や病棟には必ず転換性障害の患者がいた.転換性障害の患者に今日の精神科外来で出会うことがめっきり減ったと感じているのは筆者だけではないはずだ.治療をしている精神科医も今では少なくなったと聞く.その背景にはいくつかの要因があろう.精神科診療の全体が薬物療法に傾いたが,薬物療法が著効せず力動的(精神分析的)な理解と精神療法が必要となる転換性障害患者は,精神科医にとって扱いづらい患者になった.その結果,転換性障害患者は自分の置き場所を他科に求めたのではないだろうか.医師から「心の問題です」といわれたものの,精神科受診への抵抗も加わり,詳細な検査を求め患者はジプシーのように彷徨う.
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