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はじめに
「筋膜(fascia)」とは,全身を包む結合組織系軟部組織成分のことを示す.国際筋膜研究学会において,「皮下で筋やほかの内部器官を結びつけ,包み,分けている鞘やシートのような剝離可能な結合組織の集合体」と説明され,高密度平面組織シート(関節包,支帯,筋間中隔および内臓,脈管系,神経,髄膜,骨膜)で靭帯や腱などを含み,全身に広がる.これらは筋膜が筋の生体力学,末梢運動の協調や固有受容器および姿勢保持において重要な役割をもつことを示し,筋膜は第二の骨格とも呼ばれる13).また,全身の筋や筋膜ネットワークを通して姿勢保持や動作の安定性に関与する解剖学的な連続性をmyofascial chain(筋膜運動連鎖)という.代表的なものとして,myofascial meridians(Thomas W. Myers)やmyofascial sequence(Luigi Stecco)などがある.Myers5)は,身体全体を交差させるように,頭部から足趾へとつながる筋膜の連続について述べ,多くの研究者によってsuperficial back line,back functional line,front functional lineの連続性が明らかにされている12).また,Stecco9)は,筋膜の配列が運動ならびに力の伝達に関係していると仮定している.それぞれの理論の違いはあるものの,この解剖学的な連続については皆同様な見解を示している.筋膜の連続は,同側方向の運動に関わる筋群の解剖学的連続性を示し,このつながりに沿って広がる疼痛や機能障害の原因を説明できる可能性がある.
本稿では,これらの筋と筋膜の相互作用について,myofascial chainとしての働きを含め概説する.
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