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はじめに
頸椎前方椎体間固定術は,RobinsonとSmith13)が椎間板症に対して椎体前方から椎間板を除去し,腸骨稜から採取した移植骨で椎体間を固定した1955年の報告が始まりである.以降さまざまなmodificationが開発され進化を遂げているが,現在もなお頸椎疾患に対するスタンダードな術式である.椎間板や椎体骨棘,椎体間の不安定性といった頸椎前方要素が脊髄,神経根障害の要因となっている場合や障害高位で局所後弯を呈しているような状態では,神経を直接除圧し,動的因子も除去できる理にかなった術式である.また,頸部の筋の温存の観点から術後の頸部痛においても後方からの術式と比べ有利と考えられている.
この手術には,移植骨の脱転や圧潰,椎体への沈み込み,それらに伴う偽関節や局所後弯変形といった合併症も存在する.また,健常部位からの自家骨採取に伴う痛みや感染などの問題も指摘されている17).健常部位である採骨部位への侵襲を極力抑えるため,当院では,椎体亜全摘が必要でない椎間板レベルの除圧のみで対処できるものに対しては腸骨をブロック状に採取するのではなく,polyetheretherketone(PEEK)ケージ内に少量の自家腸骨を充塡し椎体間に挿入する椎体間固定術を行ってきた.
近年ではさらなる低侵襲化を目指し,さまざまな移植材料の中でも新しく開発されたスポンジ状の人工骨である,多孔質ハイドロキシアパタイト/コラーゲン複合体(HAp/Col)15)をPEEKケージへの充塡剤として導入し良好な成績を得たことを以前報告した1).
しかしながらPEEKは,海綿骨と同等の弾性を有し,X線透過性で骨癒合判定に有利といった利点はあるものの骨伝導能をもたないため,骨癒合率の低下が懸念されている.近年,骨伝導能をもつチタンでコートしたPEEKケージ(チタンコーティングPEEKケージ)が開発され,本邦でも使用可能となった.以後,われわれもこのチタンコーティングPEEKケージ内に多孔質HAp/Colを充塡して使用しており,短期の成績ではあるもののPEEKケージと比べ良好な成績を得ているので報告する.
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