Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
頸椎前方キーホール神経根減圧術(anterior cervical key-hole foraminotomy)は,小さな鍵穴から症状の原因となっている神経根の圧迫病変のみを切除するが,椎間板を温存することにより椎間固定は行わず椎間可動性を維持できる手術方法である.片側の神経根症状を訴え,画像上,脊髄自体の圧迫がほとんどなく,神経根領域に限局した椎間板ヘルニアや骨棘が原因になっている場合によい適応となる.椎間板の機能が温存できることに加え,片側アプローチのため咽頭・喉頭部の牽引が少ないなど低侵襲な手術法であり,保存治療を優先していた症例においても手術を考慮しやすい.2017年末より本邦においても頸椎人工椎間板の使用が始まり,椎間板機能を温存するためのオプションが増えたが,その低侵襲性の利点は失われていない.
椎体間固定を行わない頸椎前方キーホール神経根減圧術としては,鉤椎関節経由のアプローチ3)が一般的である(図1).これは,椎間板の最も外側部に存在する鉤椎関節部に8mm程度のキーホールを開け,ここから神経根の起始部に到達し減圧を行う手技である.鉤椎関節に沿って進入するため,オリエンテーションが比較的得やすいことが利点である.しかし,椎間板の線維輪の外側部を一部切除するため,ここから内側部分の椎間板が脱出したり,術後椎間板高が低下し後弯や側弯変形を生じたり,ときに意図せず椎体間固定がなされてしまうことが欠点となる1).一方,今回紹介する経椎体キーホール手術2,5〜7,9,11)では椎間板腔にほとんど進入しないため,さらに良好な椎間板の温存が期待できる(図1).ただし,C4やC5などより高位の神経根に頸椎体法を用いる場合は,頭側から尾側へ向かうアプローチであるため下顎などが邪魔になることがあり,こういった場合は水平に近いアプローチの鉤椎関節経由のほうが有利となる.また,後方からの神経根減圧術も椎間板を良好に温存でき,広く行われている.この方法は外側に限局した椎間板ヘルニアの摘出には優れた方法と思われるが,神経根の前方に存在する骨棘の切除は困難であり,無理をすると神経根損傷の危険を伴う.
Copyright © 2018, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.