Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
胸椎・腰椎脱臼骨折の病態と各種分類
胸椎,腰椎はそれぞれ12椎,5椎から構成され,その高位によって独特の解剖学的特徴を有する.上中位胸椎(T1-10)は肋骨,胸骨とともに一体化した胸郭を形成する(図1).そのため,高齢者の圧迫骨折を除き軽微な外力で損傷されることは少なく,通常高エネルギー外傷で生じる.損傷される場合には脱臼骨折の形態をとることが多く,脊髄損傷を合併しやすく完全麻痺の比率が高い.下位胸椎(T11以下)では肋骨弓がフリーエンドとなり,可動性が増す.そのため,胸腰椎移行部として分けて考える必要がある.同部(T11-L2)は一体化した胸郭の直下に存在し,後弯位の胸椎と前弯位の腰椎を連結している.ゆえに,胸郭にかかる応力が集中しやすく,脊柱の中で最も力学的な負担が高い部位の1つであり,脊椎損傷をきたしやすい.中下位腰椎(L3-5)では椎体サイズが大きく,前弯位のアライメントとなる.自由度が増すために胸腰椎移行部に比べて損傷の頻度は低い.
脊椎損傷は屈曲,回旋,伸展,圧縮の4種類の応力と,これらの組み合わせで生じるとHoldsworth3)は記述している.さらに,椎間関節と関節包,黄色靭帯,そして棘上・棘間靭帯からなる後方要素をposterior ligament complex(PLC)と名づけた.1963年に,脊椎が椎体と椎間板からなる前方要素と後方要素の2つから構成されるとする2-column theoryを初めて導入し,不安定性を評価した(図2).前方要素のみ損傷される圧迫骨折と破裂骨折を安定損傷とし,胸腰椎損傷において前方要素と後方要素の両者がともに損傷される伸展型脱臼骨折と回旋型脱臼骨折を不安定損傷とした.すなわち,前方要素にPLC損傷を伴うときは不安定性損傷であり,長期の臥床や外固定だけでは治癒が得られないことが多く,骨性癒合の得られる手術治療を推奨した.
Copyright © 2016, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.