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はじめに
仙腸関節に起因する痛みにはさまざまな病因がある.強直性脊椎炎などの仙骨部の炎症性疾患,感染,腫瘍,外傷,腰仙椎固定術後などの医原性,婦人科,泌尿器科疾患の関連痛などが仙腸関節部の痛みを引き起こす.妊娠,分娩,出産後には,女性ホルモンの影響で骨盤輪が不安定になり,仙腸関節痛を高頻度で生じる.仙腸関節は滑膜関節であり,痛風や偽痛風で痛みを出すことがある.本稿では,上記のような明らかな原因疾患がなく,画像検査で軽度の関節症性変化が認められるだけかまったく異常がない仙腸関節由来の痛みを仙腸関節痛として,その診断について述べる.
仙腸関節は仙骨と腸骨からなる可動関節で脊柱と骨盤を結合する.関節のわずかな動き(2〜4度)は,仙骨の前方と後方への回旋時(nutation,counter-nutation)に生じる.仙腸関節を動かす筋肉はないため,関節の動きは腰椎-骨盤-股関節複合体の動きに伴い生じる.たとえば,股関節屈曲が腰椎前弯の減少と仙骨の後方回旋を引き起こし,腰椎の伸展が仙骨の前方回旋を引き起こす.仙腸関節の軟骨下骨,関節包や周囲の靭帯群には,侵害受容性感覚神経が富んでおり,発痛の原因になると考えられている24).
国際疼痛学会(International Association for the Study of Pain:IASP)は,仙腸関節痛を仙腸関節に起因する痛みと定義し,画像検査で異常がみられる関節炎,関節症などは除いている.症状は下肢の関連痛の有無を問わず仙腸関節領域に感じられる痛みとしている.病因ははっきりしないが,仙腸関節自体のなんらかの構造的な瑕疵,もしくは関節に過度の力がかかった結果,関節靭帯に過大なストレスがかかったことによると推定している11).
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