Japanese
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特集 脊椎脊髄の冠名徴候・症候群
Ⅱ.冠名症候群
Vulpian型筋萎縮症
Vulpian Muscular Atrophy
熱田 直樹
1
Naoki ATSUTA
1
1名古屋大学医学部附属病院神経内科
1Department of Neurology, Nagoya University Hospital
キーワード:
Vulpian-Bernhardt型(Vulpian-Bernhardt type)
,
Flail arm型(flail arm type)
,
進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)
Keyword:
Vulpian-Bernhardt型(Vulpian-Bernhardt type)
,
Flail arm型(flail arm type)
,
進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)
pp.376-377
発行日 2015年4月25日
Published Date 2015/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200112
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オリジナルの定義
Vulpian型筋萎縮症あるいはVulpian-Bernhardt型筋萎縮症という用語は,上肢近位部優位に,上腕および肩甲帯から始まる下位運動ニューロン型運動ニューロン疾患(motor neuron disease:MND)を示すものである.1880年前後のフランスにおけるEdmé Félix Alfred Vulpian(1826-1887)の観察,講義,記録により知られるようになり,フランスの神経学が導入されたわが国でも用いられた.
Vulpianは講義の中で進行性筋萎縮症(progressive muscular atrophy:PMA)の病像を述べた際に,右手の遠位筋,特に短母指外転筋が最初に侵される場合が最も多いが,中には上腕や肩甲部の筋肉がまず萎縮し,前腕と手の筋肉は何カ月も何年にもわたって長期間正常に保たれる例があることを示している.すなわち,PMAとして最も一般的にみられ,遠位優位の筋萎縮で始まることの多いAran-Duchenne型に対して,肩甲上腕型もまれというわけではないと述べている.さらに,Vulpianは剖検例の観察も行っており,上肢近位側に始まる進行性筋萎縮が脊髄前角細胞の変性によって生じることを確認している.このようにVulpianは肩甲上腕部から始まり,症候がしばらくその部位にとどまるような下位運動ニューロン型MNDの存在を一連の観察から明らかにした.
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