Japanese
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特集 Spinal dysraphism—最近の知見
脊髄脂肪腫に対する治療方針
Treatment Plan for Spinal Lipomas
長坂 昌登
1
Masato NAGASAKA
1
1愛知県心身障害者コロニー中央病院脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Central Hospital, Aichi Prefectural Colony
キーワード:
脊髄脂肪腫(spinal lipoma)
,
自然歴(natural history)
,
早期予防的手術(early prophylactic surgery)
Keyword:
脊髄脂肪腫(spinal lipoma)
,
自然歴(natural history)
,
早期予防的手術(early prophylactic surgery)
pp.95-102
発行日 2015年2月25日
Published Date 2015/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200025
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はじめに
脊髄脂肪腫の手術目的は,脊髄の係留を解除し,脂肪腫の脊髄への圧迫を取り去り神経症候を改善させる,または発症を予防することにある.さらには,術後の再係留による神経症候の悪化を長期間防止することが求められる9,23,33).
神経症候を発症した脊髄脂肪腫を手術することに批判的意見は少なく,発症後早期の手術が勧められている.しかし,無症候性脊髄脂肪腫の手術が神経症候出現を予防するかどうかは不明で,手術による神経損傷の可能性もある.自然歴が不明瞭にもかかわらず,予防的手術が支持される理由は,年齢とともに神経症候を示す子どもが増える,排尿障害や足部変形は発症すると手術で改善が難しい,神経症候の診断が乳児では難しい,などである.一方,症候性になるまで手術を待機する理由は,手術で神経損傷や髄液漏などの合併症を起こす,予防的手術後の遅発性神経障害出現率が自然歴での悪化率と比べて差がない,無症候のまま成人になる事例がある,などである2,9,22,32).
脊髄脂肪腫の治療では,脊髄脂肪腫の病型・大きさ・脊椎高位,神経症候の特徴,患者年齢などから,発症もしくは進行する可能性や手術の難易度を予見し,その結果を推測される自然歴,手術の危険性,治療チームの能力などと照らし合わせて治療方針を決めることになる.本稿では,これらの治療方針を決める因子について概説する.
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