生き方のスタイル

　「サカテさん，歯磨きしましょうか」．返事がありません．「おーい，カツヨさん」．耳元で声をかけると，ぼんやりしていたサカテさんは，ようやく気づいて「あぁ」と応えました．「ご飯食べたからね，歯磨きしましょうか」，「はい，どうぞどうぞ」，「オッケー，じゃあ，これ（歯ブラシ）持ってみてね」，「はい，どうぞ」．そう言って受け取った歯ブラシを，サカテさんはテーブルの上にポイと放り投げます．

　歯磨き前のいつものやり取りです．サカテさんは，まだ元気なころは自分で入念に歯を磨いていました．でもこの2年ほどは，自分で歯ブラシを持ってもそれを歯ブラシと認識できないためか，すぐに手から離してしまいます．ただ，歯ブラシを持ったサカテさんの手にスタッフが手を添え，歯ブラシを口まで運び一緒になって動かすと，その後もサカテさんは少しだけ自分で歯磨きをしてくれます．