連載 りれー随筆・244
それぞれの暮らし,それぞれの生き方
阿部 亜希子
1
1助産師
pp.366-367
発行日 2005年4月1日
Published Date 2005/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1665100197
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思いがけない海外での生活
なぜか今,私はパリにいる。正確にはここに住んで1年半が経過したのだが,未だに自分がどこに居るのか自問自答しないと実感が湧いてこないことがある。それは,夫の駐在という何とも受動的な形で現在の生活が始まったからなのか,一歩外に出ると日本とは風景も文化もまったく違った状況におかれているからなのか定かではない。ともかく今の私は,医療従事者を休憩中の,駐在員の妻であり主婦なのである。3年という期限付きの体験ではあるのだが……。
そんな思いがけない状況の中,日々の生活では,見るもの,体験するもの,出会う人々など,さまざまな新発見がある。フランス(特にパリ)では,いわゆる白人の姿ばかりでなく,アラブ人やアフリカ諸国の人々,そしてわれわれ東洋人などさまざまな国の人々を目にする。そして,それぞれがフランスの文化と自国の文化を融合させつつ生活しているのだ。一口にパリと言っても,地域によって雰囲気がまったく違っていることに驚かされる。高級服に身を包み,さっそうと歩くマダムたちをよく目にする地域もあれば,アラブ系の移民たちがひしめきあって生活している場所もある。文化や人種が異なっていても,すべてがフランスなのだ。
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