特集 新型コロナウイルス感染症と作業療法
コラム:新型コロナウイルス感染症を契機にも発症する神経難病:筋痛性脳脊髄炎
篠原 三恵子
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1NPO法人 筋痛性脳脊髄炎の会
pp.35-37
発行日 2022年1月15日
Published Date 2022/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202837
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筋痛性脳脊髄炎とは
筋痛性脳脊髄炎(Myalgic Encephalomyelitis:ME)は,慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome:CFS)と呼ばれてきたが,最近はME/CFSと両名併記されることが多い.ME/CFSは脳と中枢神経に影響を及ぼす複雑な慢性疾患で,機能障害は全身に及び,患者のQOLを著しく低下させる重篤な病気である.WHOの国際疾病分類において神経系疾患(ICD-11 8E49)と分類されており,その主な病態は中枢神経系の機能異常や調節障害である.通常ウイルス感染後に発症し,ストレスや過労が原因で慢性疲労が悪化してかかる病気ではなく,器質的疾患である.発症原因や病気のメカニズムはまだ解明されておらず,治療法も確立されていない.
ME/CFSは20〜40代の若い世代に発症することが比較的多く,男女比では女性の発症割合が多いことが知られている.日本の患者数は約10万人と推定され,子どもでも発症する.2014年(平成26年)の厚生労働省の実態調査1)で,ME/CFS患者の3割は症状が重く,寝たきりに近い生活を送っており,ほとんどの患者が職を失うという深刻な実態が明らかになった.何年も寝たきりで経管栄養だけに栄養補給を頼り,家族以外と会うこともできないほど重症な患者もいる.
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