特集 感染症と作業療法—新型コロナウイルス感染症を振り返る
コラム:新型コロナウイルスと障害のある人の人権
小野 浩
1
1きょうされん
pp.1247-1248
発行日 2023年10月15日
Published Date 2023/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001203569
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ハンセン病訴訟の第一人者である徳田靖之弁護士は,著書『感染症と差別』(かもがわ出版,2022)で次のように書いている.エイズ予防法による差別・偏見の拡大という苦い教訓を踏まえて政府は,「感染症の患者等に対するいわれのない差別や偏見が存在した事実を重く受け止め……今後に生かす」と謳った前文を盛り込んだ「感染症予防法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」を1998年(平成10年)に制定した.ところが新型コロナウイルス感染拡大(以下,コロナ危機)の真っただ中,2021年(令和3年)2月,わずか12日間の審議で,感染症予防法改定案を成立させた.徳田は,偏見差別を増幅した「らい予防法」や「エイズ予防法」の教訓を踏まえた前文を謳っていながら,改定された「感染症予防法」が,感染者を「社会にとって迷惑な存在」,「病毒を伝播する危険な存在」と見なす歴史の誤りを繰り返すものだと強く批判している.さらに徳田は,「感染者は被害者であり,社会を挙げて守り支えるべき対象」であるにもかかわらず,「隔離や排除の対象」とする法律・制度のもとでは,「差別を一掃することは不可能」であると断言している1).
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