わたしの大切な作業・第45回
中国武術と習慣
夏目 房之介
pp.1
発行日 2022年1月15日
Published Date 2022/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001202826
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50代から馬貴派八卦掌という中国武術を始め、71歳の今も自己練習を続けている。私は武術として使えるレベルではないが、ひたすらに足腰を鍛え、まず内臓を丈夫にし、健康な身体にしてから武術的な身体を作るという迂遠な思想である。おかげで年中風邪を引き胃腸がダウンしていた虚弱体質が改善され、肩こり腰痛もなく、現在の私の健康は八卦掌で維持されている。
一方で鍛錬が進むほどに、中国人老師のいっていたことがわかってくる。「悪い癖をやめて素直にやりなさい。そのためには思想を変えないといけない」と最初からいわれてきたが、その意味がようやく具体的にわかった気がしたのは最近の話だ。いかに自分が日常習慣的な身体の使い方をしているか。しかもそれが身体動作に関する認識の問題であるということ。反射的に勝とうとしてしまう意識や、怖さから逃げようと力が入る反応などを通して、そのことがわかってくるのだ。
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