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Key Questions
Q1:Evidence based practiceとは?
Q2:エビデンスの圧政とは?
Q3:脳卒中後の上肢麻痺におけるエビデンスの現状とは?
はじめに
臨床において,対象者中心の医療を心がけるアプローチの1つとして,evidence based practice(EBP)が挙げられる.この言葉は,一部の臨床家に,「エビデンスしか信じない,エビデンス至上主義」や「机上の空論」等と揶揄されている.しかしながら,それこそが大きな誤解であり,その誤解がEBPの推進を大きく遅らせている.ではEBPとはどういったものなのだろうか.詳細は前稿をご参考いただきたいが,ここでも簡単に報告をしておく.
Haynesら1)の示すEBPは,「対象者の希望と行動」,「対象者の病態と周囲を取り巻く環境」,「エビデンス(証拠)」,「医療者の臨床経験」の4つの因子から構成されている.つまり,EBPの代名詞のように語られる「エビデンス(証拠)」は4つの因子の1つでしかない.さて,リハ領域ではエビデンスそのものが不十分なことが少なからずある.このような領域を,Brownleeら2)はエビデンスが不確かなグレーゾーンサービスと定義している.そのうえで,エビデンスの不確実性が高いグレーゾーンサービスでは,個々の患者の価値観や好みが,EBPを進めるにあたり特に重要であることを示唆している.そして,リハのような領域で,エビデンスが確立されているアプローチのみを医療者の都合により利用することは,患者に対する「エビデンスの圧政」であると強く戒めている.
これらを前提としたうえで,セラピストが脳卒中後上肢麻痺に対してEBPを進めるためには,一般的なエビデンスを知ることが必要である.本稿では,「Stroke Rehabilitation Clinician Handbook 2020」3)とAmerican Heart Association/American Stroke Association(AHA/ASA)のガイドライン4)を参考に解説を行う.なお,後述するエビデンスレベルについて,1a:ランダム化比較試験のメタアナリシスの結果,1b:少なくとも1つのランダム化比較試験の結果,2a:ランダム割り付けを伴わない同時コントロールを伴うコホート研究の結果,2b:ランダム割り付けを伴わない過去のコントロールを伴うコホート研究の結果,を意味する.
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