特集 高齢者介護と公的介護保険
諸外国の高齢者介護
府川 哲夫
1
1国立公衆衛生院公衆衛生行政学部社会保障室
pp.675-679
発行日 1995年10月15日
Published Date 1995/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401901352
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はじめに
人口の高齢化にともなって,要介護状態にある高齢者に対する長期介護の問題は,先進国の共通の課題として21世紀に向けてのその深刻さが増加している.各国とも80歳以上の人口に対してそれを支える年齢層の女性,例えば45〜64歳の女性の人口の割合が低下している.女性の就業率の上昇はさらにこれを追い討ちをかけている.一方,高齢者のライフ・スタイルも変化してきている.従来,高齢者夫婦は若い世代とは別に暮らしていても,その一方が死亡すると残された高齢者は子の世帯に移ることが多かったが,今日では一人になってもそのまま独立の世帯(つまり一人暮らし)を続ける人が増加してきた.このような変化はすべての先進国でみられるが,特にデンマーク,スウェーデン,ドイツといった北および中央ヨーロッパで顕著である(表1).日本の高齢者の子との同居率は先進国の中で例外的に高く,3世代世帯が伝統的な規範であった.しかし,日本でも高齢者の子との同居率は過去30年間に15%ポイント低下し,スペインでは15年足らずの間に20%ポイント以上低下した.
高齢者介護の問題は古くて,かつ,新しい問題である.本稿では先進国の高齢者介護についてごく簡単に概観した後,1995年から施行されているドイツの公的介護保険の特徴と問題点を記述し,最後に高齢者介護をめぐる私的なしくみに関して2,3の論点に言及したい.
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