わたしの大切な作業・第14回
私のイッカゲン
北山 修
pp.521
発行日 2019年6月15日
Published Date 2019/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001201709
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まず、私の個人的な問題から始めたい。実は、私には生来、外斜位という目の解剖学的問題があり、見る対象に両眼を合わせる努力が絶えず求められ、非常に疲れやすい。それで若いころ手術をして、目を人工的に中央に寄せたのだが、今も、目の奥のほうでは、目が外に開こうとしている動きを感じる。
それで、世界をよく見ないで耳だけで判断していることが多く、同音異義語の多い日本語では、聞き違い、読み間違いが増える。たとえば、「一家言(いっかげん)」を「いっかごん(誤)」と読み間違えて人に修正される。記号と意味の結びつきが緩く、耳と目を連動させる努力と作業が、頭の中での四六時中続くのだ。字を見ると、口に出して読むようにして、「いっかげん」、「いっかげん」と小さな作業を繰り返している。また耳はいいほうなので、自分で間違いに気づき、訂正することも可能だ。
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