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事例提示
A氏.80代前半,女性.要介護 1,趣味はグラウンドゴルフ
性格:明るく前向きで社交的.友人が多く,その中心的存在
家族:夫と二人暮らし,夫は家事をまったくしない.A氏発症後は抑うつ的.長男,長女は近隣に在住し良好な関係
現病歴:下腹部痛が出現し,B医院にて腹水が見つかる.がん拠点病院C病院にて,卵巣がんステージⅢC,腹膜播種と診断され,卵巣がんや可能なかぎりの播種は切除した.術後,化学療法(TC療法)を開始.開始3クール後より腹膜播種は縮小し,腫瘍マーカーの低下が確認されたが,パクリタキセルの副作用と思われる末梢神経障害が強く,A氏より「死んだほうがまし.もう治療はしない」との訴えがあり,化学療法を4コースで中止し,在宅療養開始となる
経過(表):
治療〜リハ開始時:死を覚悟して治療を中断し在宅生活を開始した時期
全身状態観察目的で訪問看護が開始となる.開始3週後,OTは看護師に同行訪問し,生活動作の確認と住環境の確認を実施した.OTは,A氏の大切にしている作業の確認や,1日の生活リズムや生活動線の聞き取り,生活環境評価,安全安楽な動作方法の指導を行った.足底感覚鈍麻のため動作時は常に筋緊張亢進した状態で行う等,末梢神経障害による影響が大きく出現していた.OTの指導により動作スピードや立位バランスが改善したことから,高い自己効力感が得られた.看護師,A氏からの強い希望があり,週1回の訪問リハが開始となる
リハ開始1カ月:ADLが向上し未来への目標が語られた時期
A氏のニーズに合わせたアプローチにより,身体機能面や生活面での改善がみられた.労作時の呼吸苦の訴えや疲労感が軽減し,体幹下肢筋力はMMT 4から5へと向上した.階段昇降も可能となり,夫の見守りのもと,ほぼ自立で入浴を実施できるようになった.夫と役割分担をしながら家事を再開する等,“意味のある作業”の実践報告が増えた.「外を歩けるようになったらグラウンドゴルフの仲間に会いに行きたい」と語られた
リハ開始3カ月:生きる希望を取り戻した時期
屋内歩行が安定したため,屋外用歩行車のレンタルを開始した(図1).OTが操作方法や安全な方法の手順を指導し,動作確認を実施することで,スムーズに遂行することができた.屋外歩行訓練では,段差の昇降方法,危険の予測・安全確認・危険回避の方法指導等を適宜行った.翌週には,受診や買い物に行ってきたとの報告あり,友人宅へ毎日世間話に行く等,活動範囲も広がり,「毎日生きるのが楽しい」と語られる.3カ月後にはグラウンドゴルフの行われている公園までの長距離屋外歩行訓練を実施.A氏は友人たちと再会を果たし,自信を取り戻した様子であった(図2)
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