Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
Key Questions
Q1:認知症の背景疾患別運転行動の差異は?
Q2:任責通報制度とその対象疾患は?
Q3:認知症ドライバーに対する支援と対応はどうあるべきか?
はじめに
現在,日常臨床で運転免許をもつ認知症患者に遭遇することは稀ではなくなっている.そして,2014年(平成26年)6月1日から任意通報制度が開始され,医師が認知症と診断した場合は,任意で公安委員会に通報できる仕組みが法的に可能となった.さらに2017年(平成29年)3月12日からは,75歳以上の高齢者に対する免許保持や免許更新が厳格化された.すなわち,認知症が疑われる第1分類と判断された場合は,医師の診察を受けることが義務化され,介護保険法による認知症と診断されれば,運転が禁止されることとなった1).したがって,認知症性疾患の治療は,専門医のみならず,かかりつけ医の多くがその治療を行っている現状からすれば,今後,場合によっては医師や関係者が法的責任を問われることもあり得るため,医療関係者は認知症患者の運転免許制度に関して知識を得ておく必要がある.
また,実際に認知症を診断した際に,薬物治療や,生活指導をするにあたっては,患者が免許を保持しているかどうかを確認し,免許を保持していれば医師は運転中断や生活指導を行うことになるが,強い拒否感を示す患者や家族が稀ではないことも経験する.
そこで本稿では,筆者らがこれまで行ってきた認知症と運転問題に関する検討と,荒井ら2)の作成した「認知症高齢者の自動車運動を考える家族介護者のための支援マニュアル©」(以下,支援マニュアル©)を用いて認知症者および認知機能低下者に行ってきた運転に関する心理教育を中心に述べ,免許を保持する認知症患者への支援方法について,私見を交えながら論述する.なお,症例提示に関しては,個人情報の保護のため,本稿で議論すべき内容の主旨に影響しない範囲で大幅な改変を行っていることを了承されたい.
Copyright © 2017, MIWA-SHOTEN Ltd., All rights reserved.