増刊号 認知症と作業療法
第1章 認知症とは
1 認知症の歴史試論
江藤 文夫
1
Eto Fumio
1
1国立障害者リハビリテーションセンター
pp.550-557
発行日 2015年6月20日
Published Date 2015/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001200252
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はじめに
2005年(平成17年)6月29日に介護保険法等の一部を改正する法律(平成17年法律第77号)が公布され,「痴呆」の用語の見直しとして「認知症」に改めるように通達された.「認知症」は行政用語を装いながら,わが国の伝統的行動様式に従って,一般はもとより学術団体まで急速に普及し定着した.長く一般に使用されていた「ぼけ」が忌避され,学術的な「痴呆」と呼ぶことが暗に推奨され,20年も経ていないころである.以来,約10年の歴史を有することになる.
当時,日本痴呆学会の理事会において,痴呆の名称変更について厚生労働省(厚労省)で検討会を設置し,認知症が有力な案であることが検討会に参加していた理事から報告され,議事としてではなく,雑談風に取り上げられたように記憶している.筆者を含め,変更の必要を感じない方もおられたが,厚労省の事情もあるように理解した.政策的に認知症に予算が計上されることは,関連する諸学会にとって望ましいことでもあった.
日本痴呆学会は,2005年の厚労省の通達にいち早く反応して,同年の学術集会総会において日本認知症学会と名称変更を表明した.個人的には職場を異動し,すでに認知症領域での活動を縮小していたこともあって,2008年(平成20年)3月に10年以上務めた理事を辞任し退会した.今回,本稿の執筆を引き受けたものの,最新の研究動向には疎くなったことから,過去の個人的な原稿(参照文献)を基に認知症の歴史を振り返ってみたい.
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