書評
後藤潤/後藤昇 著「脳血管障害の解剖学的診断」
岡島 康友
1
1杏林大学医学部リハビリテーション医学
pp.169
発行日 2015年2月10日
Published Date 2015/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200149
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脳の解剖というと学生時代の解剖実習を思い出す.数十年前のことではあるが,暑さの残る秋口から冬までの間,臓器別に組まれたスケジュールにしたがって4人の学生で1体を解剖させていただいた.献体を前に臓器ごとに解剖学教授の口頭試問があったが,頭部の試問は極寒の冬で,風邪を引いて熱も出ていて最悪のコンディションで迎えたのを覚えている.そのこともあってか,脳の解剖といわれると今でも苦手で,学生時代にもっとよく見ておけばよかったと後悔する.よく言われることではあるが,臨床を知れば知るほど解剖実習の重要性を認識するという.これこそ凡人の脳の構造なのかもしれない.
本書のタイトルには「脳血管障害」,「診断」の言葉が入っているが,著者は解剖学で教鞭をとっておられる教授である.なぜ解剖学者が脳血管障害の本を執筆されたのかと思われる読者も多いであろう.しかし,本を開いてみるとその意図が伝わってくる.そもそも,脳血管障害は目に見えやすい病態である.脳の解剖を苦手とする者にとっては,解剖から入ったほうが理解は深まると考えられてのことでしょうか.実際,著者は「脳血管障害のみならず神経疾患を診断する際は,他臓器に比べて解剖学知識を多く必要とする……」と本書の意図するところを述べている.さらに,脳血管障害診断にはCTやMRIが必須であるが,解剖・病理の三次元分解能はそれら医用画像を大きく上回るものであることを付け加えている.
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