書評
「みんなの研究倫理入門—臨床研究になぜこんな面倒な手続きが必要なのか」—田代志門【著】
森下 典子
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1国立病院機構本部総合研究センター治験研究部治験推進室
pp.741
発行日 2021年6月1日
Published Date 2021/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416201825
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臨床研究はよりよい治療法を開発するために欠くことができないプロセスであり,どうしても患者さんの協力を必要とするからこそ,研究を実施する際には倫理的配慮が求められます。しかし研究者の中には,「どうしてこんなに面倒な手続きが必要なんだろう」と考える人もいるでしょうし,倫理審査委員会事務局(以下,事務局)では「この研究って,まるで日常診療の中で実施するみたいに書いてあるし,よい面ばかり強調しているけど,患者さんを参加させても大丈夫なのかな?」などと,もやもやすることもよくあることです。
そんなとき,自信を持ってお薦めしたいのが本書です。本書は,臨床研究に携わる人なら誰もが迷い込みやすい「研究と診療の区別」「インフォームド・コンセント」「リスク・ベネフィット評価」「研究対象者の公正な選択」の4つのトピックスから構成されており,日常業務の中で研究倫理が問題となる「ある,ある」とうなずくエピソードが満載です。3人の魅力的なキャラクターの会話をとおして,私たちを正しい方向に導いてくれたり,道に迷わないようにするための術(考え方)を教えてくれたりしています。
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