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Key Questions
Q1:なぜ更衣動作の訓練から装いの支援へと変わったのか?
Q2:病院での支援をどのように社会参加へとつなげていくか?
Q3:装いの支援に必要なOTの3つの視点とはなにか?
はじめに
かつてベストセラーとなった『五体不満足』1)の中に,当時大学生であった著者の乙武洋匡氏が,東京では数年ぶりの大雪の日に,若者向け人気ブランドのファッションバザールに電動車いすの破損も顧みずに出かけたことが書かれていた.また,氏のアテンダントの条件(当時)は「前髪を立てることを理解してブローしてくれる人」とあった.そう,「前髪命!」である.
一方,『あなたは私の手になれますか』2)の著者 小山内美智子氏の母親は,重度脳性麻痺の氏が自力で更衣ができないことを口実に,彼女をお姫様仕様の着せ替え人形のように着飾ってくれたそうである.それがどのような意味をもち,その後の氏に影響したかはわからないが,メディアを通して見る小山内氏はおしゃれである.要は,更衣が動作として自立していようといまいと,人の装いがその人自身を表すとすれば,OTとしてその支援に無頓着であって良いはずはない.
かつて,日本がまだ貧しかったころ,“馬子にも衣装”といわれ,普段着とよそ行き(なんと懐かしい言葉!)の区別が明確で,ハレの日には誰でもが“一張羅”(今ではこの言葉さえ死語?)を着て誇らしげにカメラに収まった時代があったことを思えば,今は,皆一様におしゃれになった.衣・食・住の中でも,衣は最も多様化した手軽な自己表現の手段といえるかも知れない.
ここでは,本特集に向けて,まずOTが装いの支援にどのようにかかわってきたのかその歴史を振り返り,次いで更衣動作と当事者の意識の変化について,さらには現在一般病院で働くOTの約7割3)を占める回復期リハでの事例と車いす対応の美容院を紹介する.
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