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本書の著者の川北慎一郎,影近謙治,八幡徹太郎の各先生は,金沢大学・整形外科,リハ医学 立野勝彦名誉教授の門下で,日々患者さんの診察に尽くし,そこでの問題や成果を臨床研究しておられます.臨床現場の他科の医師にまだリハ医学が十分に理解されていない,あるいは他科の医師がもっとリハ医と早期に連携して診療にあたれば効果を高められる,との思いが表題「リハ医学のすすめ」に表れています.多くの経験の中から症例を選び,専門分化したがゆえ他科での診断が罠にはまっても,患者の全体を独自の技術で評価するリハ診断学を駆使した協力で罠を抜け,患者をrecoveryさせた実例を多く示し,他科の医師に連携のメリットを説いています.せめて本書で解説するリハ診察のコツ・エッセンスを知ってほしいと訴えておられます.患者のリハ全体の目標実現に,より高く寄与するための作業療法実施法を考え出すポイントをたくさん,「診療に役立つエッセンス」の中から読み明かせます.日々の臨床でpitfallにはまるのはOTも同様で,抜け出すヒントが多く,失敗例からあらためて考え直す方法も学べ,お勧めの1冊です.
総論は第1章で,「リハビリテーションマインドを日常診療に」,「リハビリテーションをめぐる誤解」,「リハビリテーション医療の流れ」,「リハビリテーションとチーム医療」,「リハビリテーション診断学」,「リハビリテーション栄養」,「リハビリテーション関連診断書」の項目で語られる内容は,現実で実践と直結し,考え方をすぐ生かせます.第2章は,「障害とリハビリテーション医療の現状」で,今日的課題の,脳・神経・脳血管障害,高次脳機能障害,ニューロリハ,痙縮,運動器障害,内部障害,廃用症候群,嚥下障害,がん,介護予防が解説され,各課題のポイントや解決の要点と今後のヒントを技術的に解説し,直ちに役立ち,深く考えさせます.第3章は「障害別リハビリテーション」で各課題のエッセンスをまず示し,症例を簡明に挙げ,問題とリハ医療のポイント・技術,考えていくべき課題がわかります.第3章が本書の中心で,3部にくくり分け,「脳・神経・脳血管障害」では,リハ診断のポイント,痙性等の難題解決策の各種と成績,先進のニューロリハの現状等,OTとして当然知るべきポイントを押さえています.「運動器障害」では肩関節挙上困難等が解説されています.「内部障害・嚥下障害・その他」では,OTとしてがん患者と語り合い,心身を和ましほぐすかたちの作業を共にする過程でQOLの時間を読み取れ,認知症,せん妄,COPD,糖尿病等で,エッセンスと罠(はまりやすい誤り)が語られます.学生にはもちろん,新人から筆者のようなベテランも,読み切ることをぜひにお薦めします.
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