特集 OTの臨床実践に役立つ理論と技術―概念から各種応用まで
第1章:総論
3.作業科学
酒井 ひとみ
1
1関西福祉科学大学
pp.612-622
発行日 2013年6月20日
Published Date 2013/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100165
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はじめに
専門学校卒業後の15年間,私は臨床に従事した.その後,養成校の教員になった先で,作業療法に対するわくわく感やぞくぞく感の正体を学生に伝えていきたいと思うようになった.作業療法には近隣職種と異なった哲学があり,OTは独特の信念をもっていると気づいた.これは,作業療法の核ともいえるもので,船乗りにとっての北極星のようなものだ.しかし,作業療法実践に対する需要が急速に拡大しつつある中,作業療法における北極星をたどる術が学問的になおざりにされている状態であることを知った.ちょうど作業療法の独自性や学問的背景を明快に説明できないもどかしさを抱えていた私は,1995年(平成7年),札幌で開催された全国研修会のプレワークショップ(第1回作業科学セミナー)で「作業学」(佐藤 剛はoccupational scienceを作業学と訳して紹介,後に,作業科学1)とした)と出合った.作業科学(以下,OS)は,作業療法の歴史的背景を踏襲するかたちで作業療法の統一した視点をもち,作業が健康にとって重要であることが広く公に認知されて初めて専門職が評価されるという文脈を成立するべく誕生した2).1989年(平成元年)に誕生したこの新しい科学は,クライエントの航海を支える作業療法の北極星を指し示すための羅針盤的役割を果たすものと予感した.
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