講座 これだけは知っておきたい! 解剖・運動学にもとづいたROM治療・第8回
手①―緊張の高い手に対するアプローチ
高橋 栄子
1
Eiko TAKAHASHI
1
1富士温泉病院
pp.171-177
発行日 2013年2月15日
Published Date 2013/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5001100050
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はじめに
自由上肢の末端に位置し,視知覚機能と密接な関係を保ちながら環境と対面している手は,巧緻的な操作器官としての特性と同時に,鋭敏な知覚探索器官としての特性を際立たせている.それゆえ,手は日々の生活の中で,身体を支える,姿勢を安定させる,物を器用に把持し操作する,他者とコミュニケーションを図る,感情や意思を表現する等,多岐にわたる役割を果たすことができている.その構造は複雑で繊細であり,何らかの障害を受けると比較的早期からROM制限をきたしやすい.目で確認しやすい手の形状の変化や機能障害は,対象者に衝撃を与え生活全般に影響を及ぼしてしまう.
ROM治療は,非活動性によって起こる拘縮の予防と改善,各関節における固有感覚の正常化,関節肢位の変化に伴う循環機能の改善等を目的としており,手の役割を取り戻すための基本的な治療手技の一つである.
本講座では手に関するROM治療を今回と次回の2号に分けて紹介するが,本稿では“緊張の高い手”に焦点を当て,ROM治療における具体的介入と留意点等について,臨床的な視点から述べていきたい.
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