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私の手元に1994年9月発行のLiSA 0号があります。0号はプレ創刊号として発行され,編集委員のLiSA創刊に対する思いが記され,LiSAがどのような雑誌を目指しているのかが熱く伝わる内容でした。その頃の自分自身を思い出すために,1年に1度は手に取り読み返しています。LiSAは私の麻酔科医人生にとって特別な存在なのです。
LiSAが私の麻酔科医人生にとって特別な存在であり続けるのは,LiSAが創刊された1994年は,私が医師として歩み始めた年でもあり,麻酔科医人生が始まった年でもあったからです。LiSAは常に私の傍らで伴走してくれる存在でした。
さらにもう一つ,LiSAが特別な存在である理由は,編集主幹であった稲田英一先生が,医学部5年生の講義や臨床実習で麻酔科学の面白さややりがいを教えてくださり,また,研修医生活1日目から私に麻酔を教えてくださった,その人であったからです。
5年生の講義が稲田先生との初めての出会いでした。講義は理路整然としており,資料として配布されたプリントは今でもファイルにとじて保管してあります。それらは,学習内容を整理すること,まとめることの大切さや方法を知ることができ,臨床科目全体の学習方法を見直す機会にもなりました。
研修医1日目は,稲田先生が一人で担当する麻酔管理の見学からでした。研修医生活が始まると,このような機会を得られることはなく,最初で最後の大変貴重な1日となりました。その日から毎日が新しいことの連続で,大変な日々になりましたが,いつも手術室を牽引される姿に大きな力をいただいていました。
私がシェヘラザードとしてお話しできることは,稲田英一先生から頂いた言葉や学びを基盤として麻酔管理を進めながら形成された私の思い,そして,継続的に行っていることです。麻酔方法,手技的なこと,薬物の使い方など,“麻酔科学”の部分はこれからも変化していくと思いますが,麻酔科医としての“麻酔への向き合い方”は変わることのない普遍的な部分が多々あるように思います。
日々,麻酔器の前で活躍をしている専攻医や熱心な麻酔科研修医と一緒に麻酔をしながら少し聞いてもらおう,という気持ちでお話しいたします。いろいろな考え方の中の一つとして,どなたかの心に響き,気づきとなればよいと思います。
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