連載 いのちの詩を読む・9
言葉への創意(夜の羊達/井坂洋子)
新井 豊美
pp.698
発行日 1988年9月25日
Published Date 1988/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207455
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眠れないまぶたの下で羊を数えてみる。
ヒツジが一匹…ヒツジが二匹…ヒツジが三匹…白い群れがふくらんでやがてあなたは眠りの中へ人ってゆくだろうか、それとも眠りの訪れぬままそこに残されている?「夜の羊達」と云うこの詩に、眠れぬ夜の入眠儀式をイメージすることは勿論たやすい。だが、それにしてもなぜ作者は「さよなら」とさけぶのだろう、なぜ「眠るように見知らぬ時へ」であり、「もう一回君の生あたたかい息が/戻ってくれたら」なのだろう。
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