別冊春号 2023のシェヘラザードたち
第3夜 これが,人が死ぬパターンだ—チーム医療の心得:焦ったときほど,いつもどおりの空気でお仕事!
玉井 三希子
1
1国際医療福祉大学三田病院 麻酔科
pp.13-18
発行日 2023年4月24日
Published Date 2023/4/24
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200323
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麻酔の後期研修は東北の片隅にある,とある中核病院で開始した。昔ながらの,いわゆる「田舎の野戦病院」で,あまたの修羅場をくぐり抜けてきた定年間近の指導医とほぼマンツーマンの日々。その指導医の(愛情ある)罵声・怒声は,15年たった今でも頭に鳴り響くことがある。
毎日毎日,朝から晩まで声を荒らげ,一挙手一投足に文句を…いや,愛情ある教育をし続けるパワーはいったいどこから出てくるのかと問うたことがある。
「自分一人が超絶できる医者であっても,生涯に助けられる患者の数には限りがある。でも,研修医や看護師を一生懸命教育して,みんなのレベルを上げれば,助けられる患者の数は10倍20倍になるんだ。お前みたいなやつも,ちゃんとした医者に俺がしないといけないんだ! あー大変だ!」
奥様曰く,寝言でも「左手の固定が悪い,もっと勉強しろ,何やってんだ」などとよく怒っていたそうだが,その指導医が,低く,抑えた声で,私の耳元でささやいた忘れられない一言がある。その言葉が出た日から,今夜のお話を始めよう。
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