別冊春号 2021のシェヘラザードたち
第16夜 世界は間違えるモノにあふれてる—そのシリンジの中身は何ですか?
草間 宣好
1
1名古屋市立大学大学院医学研究科 麻酔科学・集中治療医学分野
pp.99-105
発行日 2021年4月15日
Published Date 2021/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3104200206
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あなたは誤薬・誤投与をしたことがありますか?
カナダで実施された調査1)によると,麻酔科医の85%が薬物エラーやニアミスを経験したことがあると答えています。麻酔中に使用する薬物の多くは劇薬や毒薬であり,誤薬・誤投与は重篤な転帰につながる危険性があります。誤薬・誤投与の代表的な防止対策として,ダブルチェックや6R(right patient,right drug,right dose,right route,right time,right purpose)の確認が挙げられます。しかし,人間が関与するかぎりヒューマンエラーは必ず発生します。さらに手術室では,麻酔科医が単独で薬物を吸薬したり口答指示を出したりすることが日常的に行われており,ヒューマンエラーが発生しやすい環境です。このため,ヒューマンエラーが起きにくい,起きても決定的にならないシステムを作ることが,誤薬・誤投与対策を立てるうえでのポイントになります。
今夜は,私が経験した,また身近で起こった誤薬・誤投与のエピソードを紹介します。若い読者はこれを読んで,「自分はこんな間違いはしない」と思われるでしょうか,それとも「自分も同じことをするかもしれない」と思われるでしょうか。
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